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東洋の女性の曲線美~ チャイナドレス
May 22nd 2013, 03:51

【文/Discover Taipei】

いつの時代でもチャイナドレスは、中国の女性の優しさ、奥ゆかしさ、気高さの象徴とされてきました。そこには中華圏の文化と歴史がハッキリと刻まれているだけでなく、それが西洋人の連想する「東洋のイメージ」にもなっています。

チャイナドレスの起源と発展

現在「チャイナドレス」と呼ばれている服は、一般的に女性が着る中国風のドレスを指していますが、チャイナドレスの中国語「旗袍」は、もともと清朝の時代の満州民族(旗人)の服を指していました。その伝統的な旗袍と現在のチャイナドレスは、デザインが大いに異なっています。旗袍は馬に乗って弓が射られるように、ラインが直線で、裾にスリットを入れ、体にフィットしないようになっていたほか、袖と襟には花柄の刺しゅうが大量に施されていました。また、旗袍の下にズボンも着用し、男女兼用でした。

のちに洋服の影響を受け、男性向けのものは、刺しゅうなどの装飾がシンプルになったほか、腰のくびれがなくなり、袖口は広く、そして襟は前が低く後ろが高くなり、中国語で「長袍」と呼ばれている現在のようなスタイルになりました。また、女性向けのものは、腰の部分がくびれ、裾は細く、襟は低くなり、1910年代には多くの人が着用するようになりました。1930年代に入ると、その改良型が中国の上流社会と芸能界ではやり始め、多くの富豪夫人や映画スターが飛びつき、都会の女性には欠かせないものになりました。当時のオシャレ好きな女性たちが着用したチャイナドレスには、襟をひっくり返したものや、袖や裾にフリルがついたものなどがあり、バラエティーに富んでいました。また、チャイナドレスの上から毛皮のコートを羽織ったり、真珠のネックレスをつけたりする奇抜なものもありました。

改良型のチャイナドレス~海派と京派

1920年代から1930年代にかけて、西洋の文化と流行の影響を多大に受けていた上海は、「東洋のパリ」の異名を持っていました。チャイナドレスにも洋服のスタイルが取り入れられ、上海のチャイナドレス店の仕立師が、洋服のデザインや仕立てをまねて、女性の曲線美を強調するために、膝上丈のものが出てくるようになりました。この短いタイプが上海で主流のチャイナドレスになり、「海派」と呼ばれています。

「海派」のチャイナドレスの最大の特長は、伝統的な中国のスタイルとモダンな西洋のスタイルの両者をデザインに取り入れている点です。胸のライン、腰のライン、袖が強調されているだけでなく、肩パットを入れてボディーラインを美しく見せています。また、生地の種類もシルク、綿、ベルベットと豊富で、ボタンに至っては約100種類のタイプがあり、流行感のあるチャイナドレスが、上海全域で大流行しました。

洋風で革新的な「海派」に対して、伝統を受け継いだタイプのチャイナドレスは、「京派」と呼ばれています。満州民族の多くが居住していた北京。清朝の時代の元貴族や元軍閥の政治家で上流社会が構成されていた1920年代の北京では、チャイナドレスは伝統的な路線を踏襲し、ラインが直線で体にフィットしないタイプのもので、生地もシルクか綿が主流でしたが、複雑な刺しゅうや織り目の模様に独特の特徴がありました。「京派」「海派」のどちらのチャイナドレスにもそれぞれ長所がありますが、モダンな「海派」のチャイナドレスの方が、強い影響力を発揮してきました。

台湾のチャイナドレスの流行と変遷

中華民国政府はかつてチャイナドレスを国の正装に指定していて、歴代の総統夫人も多くの外交の場でチャイナドレスを着用していました。中でも蒋介石夫人の蔣宋美齡はその代表格で、公の場ではほとんどチャイナドレス姿でした。また、賓客に合わせてチャイナドレスを選んでいたため、海外の要人に深い印象を与えていました。

「台湾でチャイナドレスが全盛期だったのは、1950年代から1960年代にかけてからかな。戦後国民政府といっしょに台湾に渡ってきた軍人とその家族たちが、チャイナドレスブームに火をつけたんだよ」と語るのは、台北市で50年以上チャイナドレスの仕立師をやっている許榮一。「衡陽路と博愛路の一帯には20数軒の生地屋があって、どの店にも必ずチャイナドレスの仕立師がいてね。全盛期には官僚夫人や名家の令嬢たちの大量のオーダーに対応しなければならなくなって、30人以上も仕立師をかかえるようになった店もあったんだよ」と台北でチャイナドレスの仕立てが盛んだった当時を振り返ります。引っ越し、誕生日、結婚式、お正月などのお祝いの場では、そうした人たちが新しいチャイナドレスをオーダーしていたのです。

台湾のチャイナドレスは、「海派」の流れをくんでいて、ほとんどの仕立師が自分は「上海」のワザを受け継いでいると言っています。1960年代に入ると、台湾でも袖無し膝上丈のチャイナドレスがはやるようになりました。「ほとんどのチャイナドレスの刺しゅうは、花柄かスパンコールだけど、新婦が着るものにはビーズも刺しゅうされてるんだよ」という許榮一。一見シンプルに見えるチャイナドレスですが、実はその仕立てには、高度なワザが求められます。襟だけでも10数タイプあり、ボタンに至ってはその数は100を超えます。また、縫い取りの種類は、一道辺、二道辺の2種類があり、縁取り、柄を合わせる對花といったワザも必要で、基礎がしっかりしてなければなりません。

「チャイナドレスを作るには、まず、採寸してから、製図、断裁、縫合を行うんだけど、生地の色や柄も考慮してボタンをつけたり、縫い取りをしたりしないといけないから、手間がかかる。だいたい5日から7日ぐらいかかるかな」というのは、官僚夫人のチャイナドレスの仕立てを手がける国宝級の仕立て師、林錦徳。仕立代は生地の種類や縫い取りの数、どんなボタンをつけるかによって異なります。

台北には、榮一唐裝旗袍、上海華美旗袍工作室、漢清旗袍といった有名な老舗のチャイナドレスの仕立屋があり、台北での滞在時間が短い外国人観光客向けに、海外配送サービスも行っています。 旅行で台北を訪れた際は、旅の思い出として、オーダーメイドのチャイナドレスを作ってみてはいかがでしょうか?

※英文版:
Showcasing the Beauty of the Oriental Woman's Figure – The Qipao

Discover Taipei 2013年05月號】

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